野良猫ってさ
雨に濡れたらどうするのかな
Zenが言う
私は考える
雨が私と君を野良猫みたいにする
雨の日
ただいまの後
時々君はいない
階段を上がる前
2階の東の角部屋を見上げた
私の部屋で猫のNekoと彼氏のZenがいるはずで
Nekoは野良猫で時々アパートのベランダに来て、いなくなると寂しいのでZenと二人でNekoと呼ぶことにした
ドアの横の小さな窓からは灯がみえる
ドアを開けながら
「ただいま」
を言う
ドアのすぐ前、廊下とも部屋とも言えないスペースがあり、またドアがある
そのドアを開けて柱にもたれたZenが座っていた
「Neko今日はいるよ」
Zenはソファの上にいるNekoを指差す
今日は君はいない
「Nekoふとってない?」
ソファの上でどことなく洗われた様な気がする猫の頭を撫でる
2日は来てないNekoはよその子みたいな顔をしている
「野良猫ってさ、雨にねぬれたらどうするのかな」
Zenが冷蔵庫から猫缶を取り出しながら言う
どうするか、私も野良猫について考える
Zenは缶詰を開けてNekoのご飯を定位置に置く
Nekoはお腹が空いていないのか知らん顔をしている
エアコンの温度を2度上げる
外は寒くて少し濡れた髪をタオルで拭く
ついでにベランダから外を見る
部屋の向いの街灯が降り続く小雨をその下だけ照らし続けている
明かりに切り取られた雨がスクリーンになる
アパートの前の二車線の道路には車はなく静かで今は谷間の様だ
キッチンの窓を少し開ける
弱い雨風が吹く
雨音は優しい
もう家の中にいて
帰ってきたんだと思う
雨風が髪をなでる
戸棚から平打のパスタを用意したら
鍋にたっぷりのお湯を沸かす
冷蔵庫からベーコン、玉ねぎ、卵、生クリームとレタス、トマトを取り出す
今日は寒いからスープも作る
小鍋には300mlお湯を沸かす
小さな冷蔵庫の上のバスケットに入っている
ロールパンもお皿に出す
小さなテーブルはお皿でいっぱいになる
飲み物は何にするか迷って水にする
コップは冷えて水滴を抱え始めている
コースターを探す
「いただきます」
私が言いZenは手を合わせている
2人向かい合い食べ始める
部屋はあたたかい
Nekoもゆっくり食べ始める
何も話さない
Nekoを見ている
時間が静かに流れて行く
「ごちそうさま」
食べ終わったZenが手を合わせて言う
お皿は全部綺麗に空になっている
「美味しかった」
君が言う
時々すれ違う君がいる
そう思う
洗い物は2人でした
「何か飲む?」
君が聞く
「ココア」
私が言う
今日は寒かったんだよ
帰り道は雨に濡れて
お腹もすいてたんだよ
Nekoが知らん顔して窓の外を見ている
#小猫
#短編